業種別支援の着眼点
(金融庁)
Xでポストされているのを偶然見かけるまで、私は知りませんでした。お恥ずかしい。
ところで、知れば知るほど、これらの資料は有用です。
これらの資料は、地域金融機関等の現場職員が担当先である中小企業・小規模事業者への事業者支援に着手する際のポイントや、事業者の特性に応じた支援ノウハウ等を業種別に整理し、『業種別支援の着眼点』として取りまとめました。
とありますが、コンサルタントにとっても役に立つ、実践的な知識が豊富です。
※個人的には、小規模クリニック(医療業)についてカバーされているところも、他にはない特徴だと思います。
例として、製造業支援の注意点をまとめてみましょう。
製造業の業種別支援の注意点
製造業を支援する際には、以下の点に注意する必要があります。
財務分析だけでは判断しない:
中小製造業は「職人技」や「名人芸」と呼ばれる属人的な技術に支えられている場合が多く、財務状況だけで判断することは難しいです。従業員の定着率やパート比率、多能工化の状況、設備の性能や状況、工場の余剰スペースなどを考慮する必要があります。
キーマンとの関係構築:
工場長など、本業に従事しているキーマンとの関係構築は、有効な支援には不可欠です。社長や経理部長だけでなく、キーマンや現場の従業員から「現場の肌感覚」を聞くことが重要です。
お客様の強さを理解する:
中小企業は、お客様に対して立場が弱く、強く出られないこともあります。顧客別損益を分析して赤字部門の廃止を提案しても、すぐに決断できない場合があることを理解する必要があります。
商売の速度を理解する:
中小企業の商売は、即断的でスピードが速いことが特徴です。このため、金融機関が望む時間軸で物事が進むとは限らないことを理解する必要があります。
環境問題への対応:
製造業は、環境問題への対応が求められています。製品や設備の環境対応仕様、ゴミ処理費用、今後の課題などを把握する必要があります。
値上げ交渉の支援:
原材料費の高騰などにより、値上げ交渉が必要な場合があります。金融機関は、整理力や調整力を活かして、値上げ交渉を支援することが求められます。
人材不足への対応:
多くの製造業で人材不足が課題となっています。外国人材の受け入れや、働き方改革など、人材確保に向けた取り組みを支援する必要があります。
事業承継:
後継者不足も深刻な問題です。円滑な事業承継を支援するため、後継者育成やM&Aなどを支援する必要があります。
取引先企業への影響:
支援対象企業が破綻した場合、取引先企業にどのような影響が出るかを検討する必要があります。特に、経営窮境が長期化している企業は、仕入債務の長期化・分割化を実施している場合があるので注意が必要です。
地域機能:
地域で唯一の生活・介護・医療インフラ維持の機能を担っている場合は、その視点も重要になります。
金融機関の「整理力」:
中小企業の経営者は、多忙で経営課題を系統立てて考える時間がない場合があります。金融機関は、経営者の思考や課題を整理し、可視化する支援を行うことができます。
長期的な視点:
中小企業の支援には、長期的な視点が重要です。短期的な成果を求めるのではなく、企業の成長を支えるという視点で支援を行う必要があります。
上記以外にも、それぞれの企業の状況に合わせて注意すべき点は異なります。
その他
売上高総利益率:
中小企業の損益や資金繰りの感覚を知るために、売上高総利益率に着目することが重要です。業界平均値との差異を即断的に良し悪しの判断基準にしないように注意する必要があります。
在庫:
在庫の量は、ビジネスモデルによって異なります。金額だけでなく、数量と単価を把握する必要があります。
生産体制:
労働集約型と資本集約型で、着眼点が変わります。
生産形態:
見込生産、連続生産、受注生産、個性生産など、生産形態によって在庫管理のポイントが異なります。
組織図:
組織図を確認することで、企業の意思決定プロセスや権限の所在を把握することができます。
基本中の基本かもしれませんが、すっかり忘れていることも多々あります。
こういった整理を事前に行っておくことで、余裕をもって支援にあたることができるのではないかと思います。
同様の資料が、ほかに、建設業、飲食業、小売業、卸売業、運送業、サービス業、医療業とあり、多くの業種をカバーしています。
中小企業の支援をされるコンサルタントの方にとっては、論点整理にうってつけです。
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ただし、本書は2010年発売と若干古いため、最新の支援事例についても、情報収集をしておく必要があります。
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