中小企業における部門別収支報告書の作成と活用方法
更新日:10月14日
今回は「中小企業における部門別収支報告書の作成と活用方法」についてお話しします。
部門別収支報告書は、企業の各部門の収益性を把握し、経営判断に活かすための重要なツールです。
しかし、多くの中小企業ではその重要性が認識されていなかったり、作成方法が分からなかったりすることが多いのが現状です。
この記事では、部門別収支報告書の基礎から活用方法まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
〈目次〉
部門別収支報告書とは
まずは、部門別収支報告書の基本的な概念について説明しましょう。
1.定義
部門別収支報告書とは、企業の各部門(事業部、製品ライン、店舗など)ごとの収益と費用を明確にし、その収支状況を示す財務報告書です。
2.目的
主な目的は以下の通りです。
1. 各部門の収益性の把握
2. 経営資源の最適配分
3. 部門間の比較分析
4. 経営戦略の立案と評価
3. 中小企業にとっての重要性
中小企業にとって、部門別収支報告書は以下の理由で特に重要です。
- 限られた経営資源の効率的な活用
- 迅速な意思決定の支援
- 経営の透明性向上
- 従業員のモチベーション向上
部門別収支報告書の作成方法
次に、部門別収支報告書の具体的な作成方法について説明します。
1. 基本的な手順
1. 部門の定義
2. 収益の配分
3. 直接費の配分
4. 間接費の配分
5. 収支の計算
2. 部門の定義
まず、自社の事業構造に合わせて部門を定義します。
- 製造業:製品ライン別、工場別
- 小売業:店舗別、商品カテゴリー別
- サービス業:サービス種類別、顧客セグメント別
3. 収益の配分
各部門に関連する売上を正確に配分します。
例:
- 製品A売上:1,000万円
- 製品B売上:800万円
4. 直接費の配分
各部門に直接関連する費用を配分します。
例:
- 製品A原材料費:400万円
- 製品B原材料費:300万円
5. 間接費の配分
共通の間接費を適切な基準で各部門に配分します。
配分基準の例:
- 売上高比
- 従業員数比
- 床面積比
例:
総間接費1,000万円を売上高比で配分
- 製品A:1,000万円 ÷ (1,000万円 + 800万円) × 1,000万円 = 556万円
- 製品B:800万円 ÷ (1,000万円 + 800万円) × 1,000万円 = 444万円
6. 収支の計算
各部門の収益から費用を差し引いて、部門別の利益を算出します。
例:
製品A
- 収益:1,000万円
- 直接費:400万円
- 間接費:556万円
- 利益:44万円
製品B
- 収益:800万円
- 直接費:300万円
- 間接費:444万円
- 利益:56万円
部門別収支報告書の活用方法
作成した部門別収支報告書を、どのように経営に活かすのか、具体的な活用方法を説明します。
1. 収益性の分析
各部門の利益率を計算し、比較します。
例:
- 製品A利益率:44万円 ÷ 1,000万円 = 4.4%
- 製品B利益率:56万円 ÷ 800万円 = 7.0%
この結果から、製品Bの方が収益性が高いことが分かります。
2. 経営資源の最適配分
収益性の高い部門により多くの経営資源を配分することを検討します。
例:製品Bの生産能力を増強する投資を優先的に行う
3. 原価削減の機会特定
各部門の費用構造を分析し、原価削減の機会を見つけます。
例:製品Aの原材料費が売上の40%を占めているため、調達方法の見直しを検討する
4. 価格戦略の立案
各製品の利益率を基に、適切な価格戦略を立案します。
例:製品Aの価格を5%引き上げ、利益率の改善を図る
5. 不採算部門の対策
継続的に赤字の部門に対して、改善策や撤退の検討を行います。
例:3期連続で赤字の部門Cについて、事業再構築計画を立案する
6. 業績評価と報酬制度への反映
部門別の業績を評価し、報酬制度に反映させることで、従業員のモチベーション向上を図ります。
例:部門別の利益目標達成度に応じたボーナス制度の導入
部門別収支報告書作成のポイント
効果的な部門別収支報告書を作成するためのポイントをいくつか紹介します。
1. 適切な部門の設定
自社の事業構造に合わせて、適切な粒度で部門を設定することが重要です。細かすぎると管理コストが増大し、大きすぎると有用な情報が得られません。
2. 正確なデータ収集
各部門の収益と費用のデータを正確に収集するシステムを構築しましょう。ERPシステムの導入なども検討に値します。
3. 合理的な配賦基準の設定
間接費の配賦基準は、各費目の性質に応じて合理的に設定しましょう。定期的に見直しも必要です。
4. 定期的な作成と分析
月次や四半期ごとに定期的に作成し、トレンドを分析することが重要です。
5. 分かりやすい表示
グラフや図表を活用し、経営陣や従業員が理解しやすい形で表示しましょう。
部門別収支報告書の導入ステップ
中小企業が部門別収支報告書を導入する際の段階的なアプローチを紹介します。
1. 現状分析:現在の会計システムや経営管理の状況を把握
2. 目的の明確化:部門別収支報告書の導入目的を明確にする
3. 部門の定義:適切な部門の定義を行う
4. データ収集システムの構築:必要なデータを収集する仕組みを整える
5. 試験的導入:一部の部門で試験的に導入し、課題を洗い出す
6. 全社展開:課題を解決しながら、全社的に展開する
7. 定期的な見直し:運用しながら、継続的に改善を図る
よくある課題と対策
部門別収支報告書の導入・運用にあたって、よくある課題とその対策を紹介します。
1. データ収集の負担:→ システム化やAI活用による自動化
2. 間接費の配賦方法:→ 活動基準原価計算(ABC)の導入検討
3. 部門間の対立:→ 全社最適の視点を強調し、協力を促す
4. 短期的視点への偏重:→ 中長期的な指標も併せて評価
5. 過度の数字への依存:→ 定性的な評価も加味した総合判断
まとめ
部門別収支報告書は、中小企業の経営を改善するための強力なツールです。適切に作成し、活用することで、以下のような効果が期待できます。
- 経営の可視化
- 迅速かつ的確な意思決定
- 経営資源の最適配分
- 従業員のモチベーション向上
- 持続的な収益性の改善
ただし、導入にあたっては段階的なアプローチが重要です。自社の状況に合わせて、無理のない形で進めていくことをおすすめします。
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最後に、部門別収支報告書の作成と活用をサポートする優れたコンサルティングパッケージをご紹介します。
中小零細企業から大企業まで、自部門の収支の実態を自分流に自由に編集して、部門別収支報告書を作成できることが最大のポイントです。
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