中小PMIガイドライン②
今回は、「中小PMIガイドライン講座 総論(詳細編)」について、中身を見ていきたいと思います。
この動画では、PMIの重要性と実施方法について解説しています。
PMIはM&A成功の鍵であり、目的達成や統合効果の最大化、従業員のモチベーション維持、取引先との信頼関係構築に不可欠です。
[出典]動画②:中小PMIガイドライン講座 総論(詳細編)(metichannel/経済産業省)
〈目次〉
--取引先の不信感
--推進体制の構築
--推進体制の実行
---推進体制における役割分担
※画像はイメージです。
※以下、『中小PMIガイドライン~中小M&Aを成功に導くために~』も参考にしながら、動画を解説していきます。
PMIとは
PMIの基本的な定義については、こちらの記事をご確認ください。
PMIを意識的に取り組まないとどうなるか?
PMI を意識的に取り組まないと、M&A の目的を達成できない、統合効果を最大化できない、従業員のモチベーション低下や離職を招く、などのリスクがあります。
M&A の目的が達成できない
○PMI は、M&A 後の統合作業であり、M&A の目的を実現し、統合の効果を最大化するために必要なものです。
○PMI を意識的に行わないと、M&A の目的が不明確になり、その後の統合プロセスがスムーズに進まない可能性があります。
○結果として、当初期待したシナジー効果が得られず、M&A の目的を達成できないリスクがあります。
※M&Aの目的(=シナジー効果、1+1>2)を実現できないということです。
・PMIは、会社が一緒になった後の大切な作業です。これは、M&Aの目的を実現して、一緒になって良かったと思えるようにするために必要なものです。
・PMIをきちんと考えて行わないと、なぜ会社が一緒になったのかがぼやけてしまい、その後の作業がうまく進まなくなる可能性があります。
・その結果、最初に期待していた良いことが起こらず、M&Aを行った目的を達成できないかもしれません。これは避けたいことですよね。
統合効果が最大化できない
○PMI には、経営統合、信頼関係構築、業務統合の 3 つの領域があります。
○これらの領域において、適切な計画と実行を行わないと、統合プロセスにおける様々な課題やリスクに対応できず、統合効果を最大化することができません。
※会社が一緒になって良かったと思える効果を最大限に引き出すのが難しくなることがあります。
・PMIには、3つの大切な部分があります。会社の運営を一つにすること、お互いの信頼関係を築くこと、そして日々の仕事のやり方を合わせていくことです。
・これらの3つの部分について、しっかりと計画を立てて実行しないと、会社が一緒になる過程で起こる様々な問題や危険に上手く対処できません。
従業員のモチベーション低下や離職
○M&A 後は、従業員は、雇用、労働条件、今後のキャリアなど、多くの不安を抱えています。
○PMI を通じて、これらの不安を解消し、従業員に新しい組織への帰属意識を持ってもらうことが重要です。
○PMI を意識的に行わないと、従業員の不安が増大し、モチベーションの低下や離職に繋がる可能性があります。
○特に、キーパーソンとなる従業員の離職は、事業の継続に大きな影響を与える可能性があります。
※従業員の皆さんのやる気が下がったり、会社を辞めてしまうことがあるかもしれません。
・会社が一緒になった後は、従業員の皆さんは、自分の仕事や将来のことなど、色々な心配を抱えていることが多いのです。
・PMIを通じて、これらの心配を解消し、新しい会社に「自分の居場所がある」と感じてもらうことが大切です。
・PMIをきちんと行わないと、従業員の皆さんの不安が大きくなって、仕事へのやる気が下がったり、会社を辞めてしまったりする可能性があります。
・特に、会社にとって重要な役割を担っている人が辞めてしまうと、事業を続けていく上で大きな問題になるかもしれません。
取引先の不信感
○M&A 後は、取引先も、今後の取引関係の変化などについて不安を抱えています。
○PMI を通じて、取引先に M&A の目的や今後の事業展開などを丁寧に説明し、信頼関係を維持することが重要です。
○PMI を意識的に行わないと、取引先の不信感を招き、取引の縮小や停止に繋がる可能性があります。
※取引先を不安に感じさせないように、しっかりと準備しておきましょう。
・会社が一緒になった後は、取引先の方々も、これからの付き合いがどうなるのかなど、心配なことがあるかもしれません。
・PMIを通じて、なぜ会社が一緒になったのか、これからどんなことをしていくのかを、取引先の方々にていねいに説明して、信頼関係を大切にすることが重要です。
・PMIをきちんと行わないと、取引先の方々が不安に思ったり、信頼してもらえなくなったあげく、取引が減ってしまったり、なくなってしまったりする可能性があります。
PMIはいつからはじめるのか?
[出典]『中小PMIガイドライン~中小M&Aを成功に導くために~』(中小企業庁)
M&A成立前のPMI準備の重要性
PMIの準備はM&A成立前から始めるべきといえます。
◯M&A初期検討段階:
M&Aの目的を明確化し、PMIにおける取り組みを意識した事前準備を行うことが重要です。
◯“プレ”PMI:
M&A成立前に、DD等の調査を通じて譲渡側に関する情報を可能な限り取得しておくこと、M&A成立後の集中実施期に何をするかを予め計画しておくことが重要です。
◯PMI検討開始時期とM&A効果の相関性:
M&Aのプロセスの早い段階からPMIの検討を開始し、取り組んでいる企業ほど、M&Aの効果やシナジー実現に成功している傾向が見られます。
※M&Aが成立する前からPMIの準備を始めることが大切です。
・M&Aを考え始める段階では、M&Aで何を目指すのかをはっきりさせて、その後の統合作業のことも頭に入れながら準備を進めるのが大切です。
・M&A成立前の準備として、M&Aが決まる前から、相手の会社についてできるだけ多くの情報を集めておくこと、そしてM&Aが決まった後にすぐに何をするかを前もって考えておくことが大切です。
PMIは、成立後100日から1年の集中的な取り組みを経て、数年間継続することが推奨されています。
PMIの主な活動
推進体制の構築
[出典]動画②:中小PMIガイドライン講座 総論(詳細編)(metichannel/経済産業省)
推進体制構築における考慮事項
・案件規模: 小規模案件、中規模・大規模案件によって体制が異なります。
・経営資源: 人員、資金などの制約を考慮する必要があります。
・M&Aの目的: 持続型、成長型など、M&Aの目的によって注力すべき領域が変わります。
・企業文化: 譲受側と譲渡側の企業文化の違いを理解し、スムーズな統合を目指します。
・組織構造: 既存の組織構造を活かしつつ、PMIを推進できる体制を構築します。
※PMIを進めるための体制を作る時に考えるべきこと
・案件の大きさによって、体制の作り方が変わってきます。
・人の数やお金など、会社が使えるものには限りがあるので、それを考えながら進めましょう。
・今のままでやっていくのか、もっと大きくなりたいのかなど、目的によって力を入れるところが変わります。
・買う側と売る側の会社の雰囲気の違いを理解して、うまく一緒になれるようにしましょう。
・今ある会社の仕組みを活かしながら、PMIをスムーズに進められる体制を作ります。
推進体制の実行
[出典]動画②:中小PMIガイドライン講座 総論(詳細編)(metichannel/経済産業省)
推進体制における役割分担
・重要意思決定: 譲受側経営者を中心に、PMIに関する重要な意思決定を行います。譲渡側の経営者や役員も意思決定に関与させることで、スムーズな統合を促進できます。
・企画・推進: PMIの全体計画を策定し、各取組の進捗管理、課題管理などを行います。
・実務作業: 各領域(経営統合、信頼関係構築、業務統合など)における具体的な作業を行います。
・小規模案件: 譲受側経営者が多くの役割を兼任することが一般的ですが、信頼できる従業員をサポートに配置することで、負担を軽減できます。
・中規模・大規模案件: 重要意思決定、企画・推進、実務作業を分担することで、効率的なPMI推進体制を構築できます。 各機能ごとに担当者を配置し、必要に応じてチーム(分科会)を設置します。
※PMIを進めるための役割分担のコツ
・【意思決定チーム】
買う側の会社の経営者を中心に、PMIに関する重要な決定をします。売る側の会社の経営者や役員にも意見を聞くと、スムーズに進めやすくなります。
・【企画推進チーム】
PMI全体の計画を作り、それぞれの取り組みがどれくらい進んでいるか、問題はないかを確認します。
・【個別案件チーム】
経営を一つにすることや、お互いの信頼関係を築くこと、仕事のやり方を合わせることなど、具体的な作業を行います。
なお、比較的小さな案件の場合、買う側の会社の経営者が多くの役割を担当することが多いですが、信頼できる社員に手伝ってもらうと、負担が減らせます。
また、中くらいや大きな案件においては、大切な決定をする役割、計画を立てて進める役割、実際の作業をする役割を分けることで、効率よく進められます。それぞれの仕事ごとに担当者を決めて、必要に応じてチームを作るとよいでしょう。
専門的な支援機関の活用
PMIを円滑に進めるためには、支援機関の活用が重要です。
・専門的な知識と経験:
支援機関は、PMIに関する専門的な知識や豊富な経験を持っており、統合プロセスの計画や実行において有益なアドバイスを提供できます。
・リソースの補完:
中小企業は人員や資金に制約があるため、支援機関を活用することで、必要なリソースを補完し、優先順位の高い課題に集中することが可能になります。
・客観的な視点の提供:
外部の支援機関は、企業内部の視点だけでは見えない問題点や改善点を指摘し、客観的なアドバイスを提供することができます。
・計画の策定と実行支援:
支援機関は、PMIの計画策定や実行において、具体的な手順や方法論を提供し、企業がスムーズに統合プロセスを進める手助けをします。
※PMIをスムーズに進めるには、経験豊富な専門家の力を借りることが不可欠です。
・大半の中小企業は、人手やお金が限られています。専門家の力を借りることで、足りないところを補って、本当に大切な部分に集中できます。
・会社の中にいるだけでは気づかないことも、外の人から見るとよく分かることがあります。専門家は、そういった新しい視点で問題点や改善点を教えてくれます。
・専門家は、PMIの計画を立てたり実行したりする時に、具体的にどうすればいいかを教えてくれます。これによって、会社が一緒になる過程をスムーズに進められるよう手助けしてもらえるのです。
次回
次回は、【動画③:中小PMIガイドライン講座 基礎編と発展編の概要】について、解説していきます。お楽しみに!
※関連書籍
本書は、中堅・中小企業向けのPMIに焦点を当てた実践的な指南書。
著者の豊富な経験に基づき、日本の企業文化に適したPMIの方法論を展開している。
特筆すべきは、PMIを単なる統合作業ではなく、買収後の成長プロセスとして捉える視点。
人的要素の重要性を強調し、企業文化の違いを問題視せず、むしろ活かす方法を提案している。
M&Aを検討する中堅・中小企業の経営者や実務担当者にとって、貴重な指針となる一冊といえるだろう。
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