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中小PMIガイドライン③:基礎編と発展編の概要


今回は、「動画③:中小PMIガイドライン講座 基礎編と発展編の概要」の内容に基づき、中小企業におけるM&A後のPMI(Post Merger Integration:統合プロセス)を円滑に進めるためのガイドラインについて、基礎編と発展編に分けて詳細に解説したいと思います。


中小PMIガイドライン③:基礎編と発展編の概要

※画像はイメージです。



 

〈目次〉

   --(2) 企画推進

   --(3) 実務作業

 

※実際の動画の内容

[出典]動画③:中小PMIガイドライン講座 基礎編と発展編の概要(metichannel/経済産業省)


※以下、『中小PMIガイドライン~中小M&Aを成功に導くために~』も参考にしながら、動画を解説していきます。





はじめに:PMIとは

 

PMIの基本的な定義については、こちらの記事をご確認ください。






1. PMIの概要と推進体制

 
中小企業におけるM&AとPMIの規模

[出典]「動画③:中小PMIガイドライン講座 基礎編と発展編の概要」



1.1 中小企業におけるM&AとPMIの規模

  • 中小企業のM&Aは、譲渡企業・譲受企業の規模やM&Aの目的によって、PMIに投入できる人員や資金が異なる。

  • 本ガイドラインでは、PMIの規模を、譲渡企業の売上高を基準に、小規模案件(売上高1億円程度)と中大規模案件(売上高3億円~10億円程度)の2パターンに分類する。

  • 小規模案件では基礎編を中心に、中大規模案件では基礎編に加えて発展編も実践することを推奨する。


※おさらいですが、PMIというのは、会社を買収した後の統合作業のことです。これは、会社の規模によって進め方が少し違ってきます。

小さな会社の場合、例えば年間売上が1億円くらいの会社を買収するときは、買う側の経営者の方がほとんどすべての作業を担当することになるかもしれません。人手が限られているからですね。これは大変な仕事になりますが、自社の経営とうまくバランスを取りながら進めていくことが大切です。

一方、少し大きな会社、例えば年間売上が3億円から10億円くらいの会社を買収する場合は、やることがもっと多くなります。この場合、一人で全部をこなすのは難しいでしょう。

つまり、企業規模が大きくなるほど、PMIの取り組みは複雑化し、専門的な知識や経験が必要となります。

そこで、次のように役割分担をすることをお勧めします。
(1)重要な決定をする人(たとえば、あなた自身や幹部の方々)
(2)計画を立てて全体を推進する人
(3)実際の作業を行う人

このように分担することで、効率よく作業を進められます。大切なのは、自社の状況に合わせてPMIの進め方を調整することです。無理のない範囲で、できることから少しずつ進めていくのがコツです。


1.2 PMI推進体制の重要性

PMI推進体制の重要性

出典]「動画③:中小PMIガイドライン講座 基礎編と発展編の概要」


  • M&A成立後、速やかに統合手続きのためのPMI推進体制を確立することが重要である。


  • 株式譲渡の場合でも、PMIは必要となる。


※M&Aが成立したら、それで終わりではなく、むしろ「本当のスタート」だということです。ここからがPMIの始まりです。
PMIは、株式を譲り受けただけの場合でも必要になりますので、ご注意ください。

さて、PMIを始めるにあたって、まず大切なのは「誰が何をするか」という体制づくりです。これをPMI推進体制と呼びます。この体制づくりが、統合作業の第一歩となります。

特に中小企業の皆様におかれましては、日常業務に加えてPMIに取り組むことが多くなりますので、社員の皆さんの役割を適切に分担することが重要です。業務の状況や人員を考慮しながら、スムーズに進めていくことが成功の鍵となります。少しずつ進めていきましょう。


1.3 PMI推進体制における役割分担

  • 中小企業では、通常業務に加えてPMIに取り組むことが多いため、人員や業務状況を考慮した適切な役割分担が重要となる。


  • PMI推進体制における主要な役割は以下の3つである。

(1) 重要意思決定:

・譲受企業経営者を中心に、PMIの大きな方針等の重要意思決定を行う。

・譲渡企業の経営者や役職員も適宜関与することで、円滑なPMIを推進できる。


※重要意思決定は、PMIにおいて大きな方針を決定する役割を担います。
譲受側の経営者を中心として行われますが、譲受側の他の役職員や譲渡側の潜在経営者や役職員も適宜関与することで、双方 の納得感や理解を得てPMIを円滑に進める効果が期待できます。
簡単に言うと、PMIの舵取り役として、統合の方向性を定め、関係者全体の合意形成を図る役割と言えるでしょう

(2) 企画推進:

・重要意思決定に基づき、PMIを円滑に行うための具体的な取り組みの企画・推進、進捗管理、タスク管理等を行う。

・重要意思決定者と実務担当者をつなぐ役割を担う。


※企画推進は、PMIにおいて重要意思決定で定められた方針を着実に実行に移す役割を担います。
つまり、重要意思決定で決まった大きな方向性に基づき、具体的な計画を立案し、実行、管理していく役割と言えます。
具体的には、以下のような業務を担います。

・PMIを円滑に進めるための具体的な取り組みの企画・推進
・進捗管理
・タスク管理

このように、企画推進は、重要意思決定を担う方と実務作業を担う方の「連結環」として機能します。
しかし、人員等の制約から、重要意思決定の担当者と実務担当者が直接やり取りすることで、企画推進の役割を代替する場合もあります。


(3) 実務作業:

・各機能(事業機能、管理機能)において、PMIに関する具体的な実務作業を行う。

・必要に応じて、譲受企業の部門長や担当者を譲渡企業に派遣する。


※実務作業は、PMIにおいて各機能(事業機能や管理機能)において、具体的な作業を行う役割を担います。 つまり、現場レベルでPMIを実行していく役割と言えます。

具体的には、以下のような業務が考えられます。
・各部門における統合プロセス(システム統合、業務プロセス統合、人事制度統合など)の実施
・統合に伴う各種手続きや書類作成
・従業員への説明や研修の実施
・新しい組織体制への移行サポート

実務作業を行う担当者は、譲受側と譲渡側の両方から選出されることが多く、それぞれの企業の知識や経験を活かして統合を進めることが重要となります。
必要に応じて、譲受側の部門長や担当者を譲渡側の当該部門に派遣するケースもあります。 
特に、重点的に取り組む必要のある機能については、譲受側と譲渡側が協力して進められるよう、分科会を設置することが望ましい場合があります。


1.4 小規模案件におけるPMI推進体制

  • 小規模案件では、譲受企業・譲渡企業ともに人員に余裕がないことが多く、譲受企業経営者がほぼ全てのPMIに取り組むケースが多い。


※重要意思決定、企画推進、実務作業の全てを経営者が担う可能性が高いことを意味します。

  • 譲受企業経営者によるPMIと、譲渡企業の経営との両立がポイントとなる。


  • 社内外の関係者から協力を得られるよう、信頼関係を構築することが重要である。

※経営者一人の負担を軽減し、円滑なPMIを推進するためには、社内外関係者からの協力が不可欠です。そのため、信頼できる従業員を譲受側、譲渡側から選出し、協力体制を構築することが重要となります。

中小企業はM&AやPMIに不慣れな場合が多いため、必要に応じて中小企業M&AやPMIに精通した支援機関に相談することも有効です。


1.5 中大規模案件におけるPMI推進体制

  • 中大規模案件では、小規模案件と比べてPMIの範囲が広く複雑になるため、譲受企業経営者が複数の役割を兼任することは容易ではない。

※譲受側、譲渡側ともに一定数以上の役職員を抱えている場合が多いため、「重要意思決定」「企画推進」「実務作業」の3つの役割を分担し、効率的にPMIを推進することが重要となります。

  • 一定数以上の役職員がいる場合は、重要意思決定、企画推進、実務作業を分担し、効率的に行うことが重要となる。

※複数の部門やチームが関与するPMIでは、組織間での連携が不可欠です。そのため、定期的な会議や情報共有の仕組みを構築し、スムーズな連携体制を構築する必要があります。

  • 重要意思決定・企画推進に関与する人数は、平均で6名前後というアンケート結果が出ている。


※中大規模案件とは、ソースによると譲渡側の売上高が3億円から10億円程度のケースを想定しています。
このような案件では、小規模案件と比較してPMIの範囲が広く複雑になるため、譲受側の経営者が一人で全ての役割を担うことは困難になります。

中大規模案件におけるPMI推進体制構築のポイント
明確な役割と責任: 各役割の担当者には、具体的な責任と権限を明確に付与することで、責任感と主体性を高め、効率的な意思決定と業務遂行を促進します。

・円滑なコミュニケーション: 関係者間で情報を共有し、意見交換を活発に行うことで、問題の早期発見、解決策の創出、合意形成をスムーズに行うことが可能になります。

・進捗管理と評価: 定期的にPMIの進捗状況を把握し、計画との差異を分析することで、必要に応じて計画の見直しや軌道修正を行い、目標達成を目指します。


1.6 支援機関の活用

  • 中小企業の多くは、M&AやPMIに不慣れで、知見や経験が乏しいケースが多い。


  • 必要に応じて、中小企業のM&AやPMIに精通した支援機関に相談しながら取り組むことが有効である。


※中小企業のM&Aにおいて、PMIは企業価値向上のために非常に重要ですが、多くの企業はM&AやPMIに不慣れで、知見や経験が不足しているケースが多いです。 
そのため、支援機関の活用が有効な手段となります。

支援機関活用のメリット
専門知識・経験の活用: PMI専門のコンサルタントや弁護士、会計士などの専門家から、専門知識や豊富な経験に基づいたアドバイスやサポートを受けることができます。

・客観的な視点の導入: 社内だけでは気づかない問題点や改善点を、客観的な視点から指摘してもらうことで、より効果的なPMIを推進することができます。

・負担の軽減: PMI推進体制構築、デューデリジェンス、統合計画策定、従業員への説明など、煩雑な業務を支援機関に委託することで、経営者や従業員の負担を軽減することができます。

・最新情報・ノウハウの取得: 支援機関は、常に最新のM&AやPMIに関する情報やノウハウを収集しています。そのため、最新のトレンドや成功事例を参考にしながら、PMIを推進することができます。




2. 基礎編と発展編

 
  • 基礎編は、円滑な引継ぎと信頼関係の構築を扱う、小規模案件においても必須のPMI取り組みである。


  • 発展編は、中大規模案件で必要となる、より高度なPMIの知識やスキルを提供する。


小規模案件(譲渡側の売上高が1億円程度)の場合は、基礎編を中心にPMIを進めることを推奨しています。
中大規模案件(譲渡側の売上高が3億円から10億円程度)発展編も実践することを推奨しています。
どちらの規模の案件においても、円滑な引き継ぎや信頼関係の構築を取り扱う基礎編は必須であることを強調しています。




次回

 

次回は、【動画④:中小PMIガイドライン講座 基礎編(概要編)】について、解説していきます。お楽しみに!





※関連書籍

 
『日本型PMIの方法論――中堅・中小企業を成長させるポストM&Aのプロセス』(竹林 信幸/プレジデント社)


本書は、中堅・中小企業向けのPMIに焦点を当てた実践的な指南書。


著者の豊富な経験に基づき、日本の企業文化に適したPMIの方法論を展開している。


特筆すべきは、PMIを単なる統合作業ではなく、買収後の成長プロセスとして捉える視点。


人的要素の重要性を強調し、企業文化の違いを問題視せず、むしろ活かす方法を提案している。


M&Aを検討する中堅・中小企業の経営者や実務担当者にとって、貴重な指針となる一冊といえるだろう。



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